20世紀の映像百科事典

エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ とは?

1951年、ドイツ・国立科学映画研究所で、科学映像をめぐる一大計画が始まった。

「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」(EC)と題するこのプロジェクトは、世界中の知の記録の集積をめざした映像による百科事典。以後30年近くの歳月を費やして数多くの研究者・カメラマンが世界各地に赴き、現在は失われた暮らしの技法や儀礼などの貴重な記録を含む、2000タイトル強の映像アーカイブが制作された。ECはさらに各国機関に渡り、日本でも1970年より下中記念財団によって、アジアで唯一のフルセットの映像が管理・運用されている。だが21世紀現在、本家ドイツのECプロジェクトは解散、日本でも16mmフィルムという記録媒体が障壁となり上映機会はほぼ途絶えていた。

短編映像のモザイクの海から さがす宝物

「食べる」「寝る」「子を産む」…
さまざまな行動をテーマに、チンパンジーに爬虫類、微生物から人間までを記録した生物学シリーズ。民族学分野では「パン作り」だけで世界40地域のタイトルが並ぶ。

提唱者G.ウォルフは、演出や解説、BGMを徹底的に避けて比較を可能にする体系的な映像モザイクを目指し、ECは20世紀の民族誌映画のひとつの型を作ったとも言われる。
動物行動学の父コンラート・ローレンツ、EC愛好者から制作者に転身した元テレビ修理工マンフレッド・クルーガーなど、多彩な才能が結集して培われた映像制作の手法は後に各国に伝授され、そこから山形国際ドキュメンタリー映画祭等でも活躍する映画監督が育ちつつあるという。

ケータイの動画撮影、Youtube映像……  あらゆる断片映像の波に溺れる私たちの日常。こんな時代だからこそ、映像記録の原点ともいえるこの映像の百科事典が、新たな輝きを放つに違いない。今まさに、「客観」や「科学」の括りからECアーカイブを解き放ち、魅惑の標本箱の宝探しにくり出そう。

 

■共催 : 下中記念財団(平凡社の創業者 下中弥三郎を記念し、教育・出版に関する助成を実施)、ポレポレタイムス社

■企画:下中菜穂(エクスプランテ・暮らしの自由研究室)、丹羽朋子(一芯社図書工作室FENICS)、ポレポレタイムス社

■協力 :川瀬慈(国立民族学博物館)、岡田一男(東京シネマ新社)、NPO FENICS

■グラフィックデザイン(チラシ・ロゴ) : 大橋祐介

 

*最新回の上映会のゲストとプログラム